契約書のひな型を見ていると、ときどき「なんじゃこりゃ?」という内容に出くわします。
今回は、その中でも著作権に関する例をご紹介します。
X(委託者)がY(受託者)に対し、著作物となり得るAの制作を委託する契約をします。
上記のように、
X=委託者 (委託料を払う)
Y=受託者 (制作をする)
という関係です。
このような場合、制作したAの著作権はYにあります。
Xが著作権者になるためには、Yからその譲渡を受ける必要があります。
今回の契約では、著作権の譲渡はせず、著作権は引き続きYにある、と契約することにしたのです。
そのようなケースで、とある契約書のひな型に書かれた条項は...
「Aに関する著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。)は、~中略~、Yに帰属するものとする。」
というものです。
ハイ、何度か目をこすって見直しました。
私の読み間違い、見間違い、勘違い、かな... と。
どこが変か、分かりますか?
通常、このようなケースでは、上記のような書き方はしません。
変なのは、カッコ書きの部分、
‘著作権法第27条及び第28条の権利を含む。’
です。
何が変か、ということについては、少し説明が必要です。
そもそも、著作権法第27条と第28条がどのような条項かといいますと、
第27条 翻訳権、翻案権等(翻訳・翻案権)
第28条 二次的著作物の利用に関する原著作者の権利
というものです。(条文は各自お読みください。)
そして、これらの権利について、著作権を譲渡する際に、
第27条と第28条については、譲渡の目的として特掲しておかないと、譲渡人に留保
される
とされています。〈著作権法61条2項〉
つまり、
「Aに関する著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。)は、Xに譲渡する。」
と書かなければ、第27条と第28条については、そのままYに残ることになるわけです。
しかし、
そもそも、Yに著作権があり、(譲渡しないということを明確にするために)「Yに帰属する」と書く条項に、
(「著作権」に当然に含まれている「翻訳権、翻案権等」や「二次的著作物の利用に関する原著作者の権利」のことを)書く必要は全くないのです。
今回の例では、
まぁ例えそのままにしていても大きな問題にはなりませんが(分かる人が見れば、「なんじゃこりゃ?」「分からん人が書いてるやろ~」とちょっとバカにされるかもしれませんが...)、
ひょっとしたら大きな問題に発展しかねない間違いがあるかもしれません。
ひな型というのは、常にそういった危険が潜んでいると思っておいたほうがよさそうです。
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一級知的財産管理技能士(コンテンツ専門業務) 高木泰三行政書士事務所
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