2015年5月18日月曜日

演劇・舞台公演の権利関係と契約に関する概要メモ

演劇・舞台を制作・公演する場合に関わってくる権利者、権利関係についての概要をメモ程度に整理しています。

上演内容や座組み等により権利者や権利内容が変わってくる場合があります。


脚本の原作者
脚本に原作(マンガや小説など)がある場合、その原作者から原作を脚本にする「翻案権」の許諾と、その脚本を利用して舞台公演を行う「上演権」の許諾が必要である。
また、パンフレット等への氏名の表示が必要となる。

脚本家
演劇の脚本(戯曲)は言語の著作物であり、脚本を書いた劇作家(脚本家)はその著作者として、著作者の権利(著作財産権、著作者人格権)を有する。
脚本(戯曲)を上演に利用する場合には「上演権」の許諾が必要である。
さらに、二次利用にあたっては、「上演権」のほか、「複製権」、「公衆送信権」、「翻案権」、「上映権」等の許諾が必要となる。
また、「氏名表示権(著作者人格権)」を有するので、パンフレット等に劇作家の氏名(ペンネーム等を含む)の掲載が必要となる。
「同一性保持権(著作者人格権)」も有しており、脚本(戯曲)の内容変更には注意が必要である。

演出家
演出家は、実演家であるとされており、著作隣接権を有する。
演出プランなどを書面化している場合には、その書面化されたものが著作物性を有していれば著作者となり、著作者の権利を有することになる。
テキストレジをする場合には、劇作家の同一性保持権に注意する必要がある一方、その上演台本の権利関係を明確にしておく必要がある。


役者等
役者等、演劇の出演する者は、実演家として著作隣接権を有する。

舞台美術家(舞台装置)
舞台装置が、美術の著作物に属するものであれば、著作物として保護される。
また、舞台装置のスケッチ、デザイン画、設計図などについても、創作性が認められれば著作物として保護される

舞台美術家(舞台衣装)
衣装についても、既製服ではなく。創作性のあるものであれば著作物性が認められ、そのデザイナーに著作者の権利が生ずる

映像の制作者
舞台美術の一部に映像等を使用する場合、その映像に著作権が生じていれば、その権利者から許諾を得る必要がある。

作曲家
新たに楽曲を制作した場合、その作曲家に著作者の権利が生じる。
なお、劇団等から委嘱されて作曲した場合であっても、著作権(著作財産権)の譲渡に関する契約がなされなければ、劇団が著作権を有しない。

作詞家
楽曲に、詞を付ける場合、作詞家に著作者の権利が生じる。
なお、詞の一部に脚本の一部を利用する場合には、脚本家の許諾が必要である。

舞台照明
照明プランについても、創作性が認められれば、舞台美術のデザインと同様に著作物として保護されることとなる。
照明プランが著作物と認められれば、そのプランナー(照明作家、照明デザイナー)は著作者となる

振付家(振付師)
振付自体が著作物として保護の対象になっており、振付家(振付師)は、振付の創作によって著作者となり、著作者の権利を有する。

既存の楽曲等を利用する場合
既存の楽曲を舞台公演で利用する場合、楽曲の著作権者からの許諾が必要である。
これについても、舞台公演に利用する場合と、DVD化、ネット配信する場合とで、許諾内容が変わってくる。

舞台を映像化する場合のレコード製作者
舞台を映像化する場合、それを撮影する場合には、その撮影した者(固定した者)に著作隣接権が生じる
舞台でCD音源が利用されている場合、レコード製作者からの許諾が必要になる。


舞台公演は、著作権法での「上演」ということになる。
従って、その場限りの舞台公演であれば、上演をするために必要な権利処理だけを行えばよいことになる。

一方で、再演を行う場合や、舞台公演を映像化し、DVDのような形で販売する、ネットで配信する、というような場合は、「複製権」や「公衆送信権(送信可能化権)」が関わってくる。
映像を映画館などでスクリーンに映して観客に見せることがあるが、この場合には「上映権」が関わってくることになる。

公演だけでなく、その後の活用も検討しているのであれば、最初の段階できっちりと権利処理の契約をしておくことが必要である。


○ 公演に関する権利関係、契約についてのご相談は、こちらから。

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