2015年3月17日火曜日

「会いたい」訴訟

大阪地方裁判所で、作詞家が「著作者人格権」を侵害されたとして賠償金の支払いを求める訴訟が起こされたようです。

報道によると、作詞家の沢ちひろさんが作詞し、歌手の沢田知可子さんが歌う「会いたい」という楽曲について、昨年、沢田さんが出したアルバムに同曲を収録した際に次のような行為があり、これが著作者人格権のうち同一性保持権を侵害し、精神的苦痛を受けた、主張しているようです。


(1)タイトルに、「会いたいwith INSPi」と、アカペラコーラスグループの名称が入れられた。
(2)イントロに(「I’m in love with you」と聞き取れる)コーラスが入っていた。

(1)のタイトル(題名)については、通常、著作権はない、とされています。
しかし、著作者人格権のうち同一性保持権については、「題号の同一性」も含まれています。
「会いたい」という題号に「with INSPi」を付けた行為が(意に反した)改変であれば、著作者人格権(同一性保持権)の侵害ということになるでしょう。

(2)については、(実際に聞いていないので、どのような感じなのか分からないのですが)コーラスが歌詞の改変になるのか、難しいところですね...
歌詞そのものを変更したり(替え歌のようなケース)、別の文言などを加えたりすると「改変」にあたるとも考えられますが、冒頭部分のコーラスに何か文言が入るとか、下のような歌い始めの前にセリフを言うというのが、改変に当たるかどうかは判断が難しいところです。

ロックの楽曲のコピーを文化祭で演奏する時に、演奏の間に「イエ~イ!」とか「みんな、乗ってるかぁぁっ~い!?」みたいなことを叫んだら(なんか古っ (汗)、それは改変になるのでしょうか?

また、コーラスで入っているとすると、どこまでの編曲が認められるのか、という問題も出てきそうです。
「ア~」とか、「ワワワワ~」みたいな、意味をなさないコーラスだけが認められるのでしょうか?

ちなみに、同一性保持権における「改変」とは、「意に反する」ものとされており、著作者の精神的・人格的利益を害しない程度のものであれば、同一性保持権の侵害とはならないとされています。

ずいぶん前、「おふくろさん事件」があったのを覚えていますでしょうか?
森進一さんが、持ち歌である「おふくろさん」を歌い始める前にセリフを入れた行為について、作詞家が「もう歌わせない!」と言った出来事がありました。
この「セリフを言う」といった行為が著作物の改変に当たるのかどうかは、結局判断されないままでした。
(なお、作詞家の方は、後日、これは著作権の問題ではない、ということを言ったそうです。)


今回の裁判は、昨年9月にあったとされる「替え歌事件(?)」に端を発しているとも言われていますが、訴える動機はどうであれ、侵害の判断とは関係ありません。

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